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まつり駿楽

Author:まつり駿楽
血統、ベストパフォーマンス、実績の関係性を重視した競馬予想とクラシックの展望などをしています。2012年2月3日よりキルトクール株式会社の神官として入社。fc2小説ページの他、2019年11月2日より「駿楽牧場」にて執筆活動も展開しています。

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ディープな欧州血統
時に「ブラッドスポーツ」と呼ばれる競馬。幾多のレースを経て,栄える血統,淘汰される血統の選別がされますが,血統の歴史を追うにはその国の頂点とするレースの勝者を見るのがベターではないかと思われます。

そうした中で,来週は日本競馬における最高峰のレースである春の天皇賞が行われますが,春の天皇賞において最も活躍する血統であり,競馬の歴史が長い,欧州競馬血統について書いてみようと思います。


(参考記事・ちょっとした父系考察)


欧州三冠レースにおける血統

現在の欧州競馬では,イギリスのエプソム競馬場で行われる英国ダービー,同じくイギリスのアスコット競馬場で行われるキングジョージ6世&クイーンエリザベスS(以下,キングジョージ),フランスのロンシャン競馬場で行われる凱旋門賞の3つのビッグレースを「欧州三冠」と呼ぶ声があります。いずれも距離が約12ハロンという3つのレースですが,その全て制した馬はミルリーフ(Mill Reef),ラムタラ(Lammtarra)のわずか2頭しかいません。

そんな中で,キングジョージと凱旋門賞は3歳以上のレースですが,凱旋門賞では近10年で3歳馬が7勝しているのに対し,キングジョージにおける3歳馬の優勝は近10年で2頭しかいません。時期的に凱旋門賞の方が後なので,成長力云々による逆転という部分もあるかもしれませんが,こと血統に関して言うと,キングジョージで最も多く勝っている父系はサドラーズウェルズ(Sadler's Wells)の4頭であるのに対し,凱旋門賞で最も多く勝っている父系はDanzig系の3頭となっています。どちらもノーザンダンサーを先祖としてはいますが,サドラーズウェルズがスタミナ型であるのに対し,Danzigはスピード型であることから,レース質そのものが根本的に違うという見方もできます。

なお,欧州三冠レースの中で唯一の3歳限定戦である英国ダービーについてですが,近10年の中で最も多く勝っている父系はサドラーズウェルズの4頭。母の父系も含めると,ミルリーフ系も4頭(父系2頭,母の父系2頭)となっています。

※英国血統とフランス血統

こうして見ていくと,同じ欧州で活躍している系統でも,英国ダービー,キングジョージで強い英国血統と,凱旋門賞で強さを発揮するフランス血統に分類されるのではないかと思われます。これを日本の産駒として見ていくと,英国血統の場合は,牡馬は中長距離型,牝馬は短距離型にシフトするようなところがあり,急なラップ変動に弱い代わりに持続性のある脚を使います。英国血統に属する父系はサドラーズウェルズ(Sadler's Wells)を筆頭に,ミルリーフの父であるネヴァーベンド(Never Bend),ラムタラの父であるニジンスキー(Nijinsky),あるいはエルグランセニョール(El Gran Senor),ブラッシンググルーム(Blushing Groom),ロベルト(Roberto),ブレニム(Blenheim)といったところが挙がります。

一方のフランス血統に関しては,「広いコースが得意で,短中距離型」という傾向があります。持続性は英国血統と比べると弱いですが,それでも比較的持続力のある脚を使える父系であり,脚質の柔軟性の高さが大きな武器となります。これに属するのは,Danzigを父に持つデインヒル(Danehill),凱旋門賞レコードホルダーのパントレセレブル(Peintre Celebre)の父であるNureyev,あるいはリファール(Lyphard),トニービンといったところで,日本での成功例が多い血統となっています。

※「狂気の凱旋門賞血統」リボー系の変遷

高松宮記念の予想の時に,キンシャサキセキの母の父系リボー(Ribot)系を「狂気の凱旋門賞血統」と表現しましたが,これはリボー自身が凱旋門賞2連覇を果たしたこと,子孫が強さと脆さを極端な形で発揮していたことを評してのものでした。しかし,リボー系が今大きく繁栄を遂げているのは凱旋門賞が行われるフランスではなく,ブリーダーズカップ・クラシックを頂点としているアメリカの方になっています。

以前,高松宮記念の回顧の中で,欧州型スタミナタイプの父系と米国型の父系は近似の関係にあると話しましたが,実際の距離適性で言えば,米国型の父系の方が短めにシフトされています。また,ダートコースに対する適性も大きく変わってくるので,同じリボー系であったとしてもある程度は別の存在として見た方が良さそうです。

そうした中で改めてリボーが源泉の父系を見ていくと,リボーと同じく凱旋門賞2連覇を果たした(Alleged)はフランス血統,ブライアンズタイムの母父にあたるグロースターク(Graustark),プレザントコロニー(Pleasant Colony)を輩出したヒズマジェスティ(His Majesty)などは米国血統と言えます。もっとも,「強さと脆さを極端な形で発揮する」といった性格的な部分はあまり変わらなかったりするのですが,同じ父系であってもタイプが全然違うことはノーザンダンサー系種牡馬やサンデーサイレンスの孫などを見ても一目瞭然で,母の父や環境などの違いを見ていくのも,血統を見ていく上で大事なことであることを窺わせます。

※日本の強豪馬が凱旋門賞を目指す理由

さて,一昨年にはディープインパクトが出走し,昨年はメイショウサムソンとウオッカのダービー馬2頭が参戦を予定していた凱旋門賞。日本の競馬の中で海外遠征というと,真っ先に思い浮かぶレースがおそらく凱旋門賞ではないかと思われるのですが,どうしてそういった志向があるのかについて,一つ考察してみようと思います。

まず,興行という視点で見れば,各国の最強馬,代表馬が集う歴史あるレースだったという点が大きいように思われます。それはシーバード(Sea Bird)が勝った1965年の凱旋門賞,ダンシングブレーヴが1986年の凱旋門賞などを見れば窺えるところではあり,日本で言うところのジャパンCと有馬記念がドッキングしたようなレースと表現すればわかるのではないかと思います。また,時期的にも夏競馬の空白期間があって,ローテーションの一本化が図りやすいというメリットもあります。さらに,最近の競馬ファンの場合,競馬ゲームにおける海外遠征の元祖が凱旋門賞だったという面もありますが,もっと根本的な理由として血統的因果があるからではないかと思われます。

先に取り上げたディープインパクト,メイショウサムソンは,母の父系がフランス血統のリファールであり,特にメイショウサムソンの母父は凱旋門賞馬ダンシングブレーヴなのでわかりやすい例ですが,ディープインパクトよりも前に絶対的な最強を誇っていたシンボリルドルフは,その祖先トウルビヨン(Tourbillon)がフランスの馬でした。また,1982年から1992年にかけて11年連続リーティングサイアーに輝いたノーザンテーストも現役時代はフランス。1988年の凱旋門賞馬トニービン,数少ない3歳牝馬による凱旋門賞制覇を果たしたサンサンなどといった馬を日本に持ってきていることからも,ある種の日本競馬の恩返しみたいなものが「海外遠征≒凱旋門賞」みたいな信仰に繋がっている部分があるように思われますが,それは言いすぎでしょうか。

※ウインドインハーヘアの遺伝力

話が思い切り横道に逸れた感がありますが,最後にディープインパクトの母であるウインドインハーヘアについて触れておきます。

ウインドインハーヘアはアルザオ(Alzao)というリファール系の父を持ち,母の父系は英国血統のブレニム系。日本では,サンデーサイレンスを父に持つディープインパクトとブラックタイドの2頭の重賞勝ち馬を輩出しましたが,その実績を見ると,弟のディープインパクトが無敗でクラシック三冠を達成するなどG1レースを7勝したのに対し,兄のブラックタイドはスプリングSを勝ってからは一度も勝ったことがなく,大きな差が生まれています。

サンデーサイレンスという種牡馬は,高い瞬発力とスピード能力を子供に伝える一方で,母馬次第で馬の質が大きく変わってくるという特質も持ち合わせていますが,ディープインパクトは柔軟性に富んだスピードを持つリファール系,無尽蔵なスタミナを持つブレニム系の影響をバランス良く受け継いだスーパーホースであったのに対し,ブラックタイドはブレニムの影響を強く受けているように思われます。ブラックタイドに関しては皐月賞後に屈腱炎にかかって長期休養を余儀なくされ,それが競走能力に影響を与えている可能性は否定できないものの,弟ほどのスピードを持ち合わせていないというのも,道中の戦略と上がり3ハロンの時計の出方などから窺い知れます。

現在,アグネスタキオン産駒のニュービギニングがケガで離脱することなく現役を続けていますが,大阪ハンブルクCで見せた時計勝負への弱さ,その前のドロドロ馬場で行われた松籟Sにおける勝利の走りを見ていると,ブラックタイド以上にブレニムの影響が強く出ているように思われ,スピードを持っていないと何も始まらないG1レースの舞台に上がるのは非常に困難だと思われます。
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血統話 | 00:04:28 | トラックバック(0) | コメント(0)
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